レイアウトのトポロジー

VRMはその名が示すように「鉄道模型のシミュレーター」という位置付けです。従って、VRMは良かれ悪かれ、鉄道模型というものが持っている性格を受け継いでいると考えられます。

一方で、VRMはV(Virtual)であるがゆえに、本物(Real)の鉄道模型では通常できない、またはしないことを実現できるという可能性も持っています。今回はそのような話題の1つです。

 

もしVRMが、基本的な機能はそのままに、「鉄道模型」ではなく「鉄道」の再現を目指して開発されていたら(その場合、名前もVRMではなくなりますが)、また赴きの異なるソフトになっていたことだろう、と思ってみたり。

たとえばレイアウトベースの左右両端を接続してループする機能があったりとか。

リアル鉄道模型レイアウトのトポロジーを考えた場合、最も基本的な構造は下に図示するような感じになるはずです(矢印は列車進行方向を示す)。これを仮に「鉄道模型レイアウトのセオリー」と呼ぶことにします。

トポロジー(topology)は「位相幾何学」と訳されたりしますが、かいつまんで言うと、図形の同一性を判断する(区別する)のに、ピッタリ重ね合わさる(いわゆる合同)か否かではなく、その構造の性質をもっておこなう、というもの。

例えば左図の場合、左絵が1本の閉直線で構成されるのに対し、右絵は2本の閉直線で構成されています。この場合「位相が異なる」といい、逆に1本の閉直線で出来ているもの(最もシンプルなのは真円)は左絵と「位相が等しい」と考える。

<鉄道模型レイアウトのセオリー>

"Over the Inland Sea"を作成するにあたり、海上橋として長い複線の直線区間が必要となりました。上掲のセオリーに従った場合、上右図のトポロジーを採用することになりますが、これにはいろいろと問題があります。

第1に海上橋とすべき直線路の候補は楕円上下の直線部になりますが、いずれを海上橋とするにせよ、もう一方は回送(橋を渡った列車を元に戻す)区間になります。これは少し無駄に感じます。

第2に、海上橋から前述の回送区間が見えたりするとマヌケですから、2の直線区間同士の距離は充分に離れていなければなりません。また、レイアウトベースとの関係を考えると、少なくとも海上橋の進行方向左右には「水面」を充分に敷き詰める必要があり、それに必要な距離もとることになります。この結果、目的である海上橋区間の長さに比して、必要以上にレイアウトベースが巨大化してしまいます。これはビュワーのパフォーマンスダウンにつながり、作業効率を下げるので避けたいところです。

 

そこで発想を転換することにしました。まずは下図をご覧下さい。

 

 

 

 

 

 

 

Overviewにも書きましたが、VRMoviesでは「動画作成を目的としたレイアウト作成」を主におこなっているので、見せ場以外の部分は可能な限り省力するようにしてます。

逆に、リアル鉄道模型同様に「いろいろな角度から俯瞰して楽しめるレイアウト」を目指す場合、本稿とは異なる考え方をすべきかも知れません。

 

 

 

 

<単線から複線を作る?>

上左図は、トポロジー的には先に示した「一般的な単線構造」と位相を等しくします。要するに、上下からギュッと押さえて、本来は1本の単線ループであるところを、無理矢理同じ単線同士がすれ違うようにしたというわけです。

実際のレール敷設にあたっては、レール構造の制限から上右図のようなループを作ることになります。もちろん、1本の単線ループからできている、というトポロジーは変化しません。

ループ構造をではなく、開放直線区間のみを敷設する、というのももちろんアリですが、本稿では捨て置きます。

<Over the Inland Sea の擬似複線構造>

紙面構成の都合で左図は横長になっていますが、実は縦長の方がお勧め。レイアウター使用時にマウスホイールを効果的に活用できること、ビュワー時の光源方向(レイアウター表示で下方から入射、多分)との兼ね合い、がその理由。

最終的に、"Over the Inland Sea"では上図のような擬似複線構造を採用しました。レイアウトサイズは縦長の 4000mm x 16000mm で、海上橋に当てるべき直線区間は約10000mm確保できました。レイアウト新規作成時のデフォルトサイズである 8000mm x 8000mm と面積が等しい(つまり費やすテクスチャ=メモリ資源が等しい、多分)にもかかわらず、そのサイズでは決して実現できない直線路を作れたことになります。

 

レイアウト面積が等しければ消費するメモリも等しい、という仮説についてはこちらで検証しました。

また、この構造には他にも利点があります。

第1に、同じ編成を一方向に走らせておくだけて勝手に上り線・下り線の両方を走行してくれる、が挙げられます。上図左右の折り返し区間に適当なヤードを設けてやって複数の編成を待機させておき、一定間隔で発車させれば、後は直線区間を眺めていることでいろいろなパターンのすれ違いを楽しむことができるというわけです。もちろん、先行列車に追いついてしまわないよう、走行速度を一致させておく必要があります。

第2に、折り返し区間を便宜上のものだと割り切れば、ストラクチャの設置を直線のみに集中することができます。また、実際の鉄道を思い浮かべた場合、そのほとんどはこういった直線区間が占めるわけですから、見た目のリアリティも増して良い感じに仕上がります。

応用編としては、直線区間の両端にポイントを設置して複々線に拡張したり、さらにその応用として実在駅の再現レイアウトをこの構造で作成する、というパターンも考えられます。

 

来春にはVRM4がリリースされる(かも)という話ですが、信号を配置すると閉塞区間が設定されて、これを元に各編成が先行列車追い付きを回避すべく自動的に速度調整してくれる・・・みたいな機能が実装されたりすると嬉しいな、とか思ってみたり。

おそらくリアル鉄道模型でこのような構造を採用することは稀と思われます。というのも、リアル鉄道模型ではコントローラを操作する人間は単一の俯瞰視点からレイアウトを見ることになるため、極端な縦長(または横長)構造のレイアウトベースは運転操作性を損なうからです。もちろん、設置場所の問題からも難しいでしょう。

そのような意味において、本稿で取り上げた構造は、自由に視点を操作でき、かつ、実装メモリ以外に大きさに制約を持たないVRMならではの構造、ということができるかと思われます。

VRMoviesは、ここに紹介した技術情報について、読者のお手元の環境での再現性をいかなる場合においても保証いたしかねます。ご承知おきください。

 


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