レイアウト作成の三大潮流

ネット上に公開されている先達方のVRMレイアウトを拝見するに、VRMのレイアウト作成の路線には大きく分けて3つの潮流があるように思われまして。ここでは、なんとなくそれを分析してみようという趣向でございます。

本稿では、まず私の考える3つの潮流を、具体例を挙げながら示します。続いて、それぞれの潮流の特性を分析します。最後に、VRM自身はどの潮流を指向しているのかを考えます。

「だからなんだ」と問われれば、「ゆえの雑文なり」と答えるのみ。

 

 

本稿で例示する先行サイトについては、あくまでも私=ghostの主観によるものであって、各作者ご自身のお考えとは必ずしも一致しないであろうことを、予めお断り申し上げます。

<VRMレイアウト作成の三大潮流>

衒学技法その1:

図で示すと、なんとなくそれらしい。

上は、私の考える「三大潮流」を図示したものです。

便宜上、それぞれ「印象派」「写実派」「技巧派」と命名してみました。図が示すように、これらは完全に分断したものではなく、同じ作者であっても、この三大潮流すべてにそれぞれ濃淡の差はあれ属しているものと考えられます。

以下、私の考える三大潮流を順に説明していきます。

衒学技法その2:

3つくらいに分類して相関を論じると、なんとなくそれらしい。

 

三大潮流その1:印象派

のっけから脱線しますが。

最近、感動的なWebに出会いました。のりか&きこり夫妻による「木こり鉄道」というリアル鉄道模型を扱ったサイトです。詳しいことは同Webを訪れていただくとして、ここで取り上げさせていただいた理由は、「鉄道模型の王道ココにアリ」と感じいったからです。

限られたレイアウト面積の部々分々に、それぞれ製作者の思いを込めた情景を作り込むというスタイルは、一見して全体の統一感に欠ける感もありますが、「箱庭」とも別称される鉄道模型にあっては、やはり王道なのではないか、と思うわけです。「木こり鉄道」では、ご夫妻の鉄道模型に寄せるロマンがしみじみと伝わってくるレイアウト写真が数多く公開されていますので、未見の方は是非一度訪問してみてください。

その筋では有名なWebではないかと思うのですが、当方はつい最近Web検索で辿り着いた次第。

木こり鉄道ではNゲージの他、Gゲージの敷設も進んでおり、こちらも見ごたえがあります。メルヘンチックな構成が前面に出ていますが、その一方で技術情報も充実しています。実は後述する「技巧派」なのかも。

VRMは、Virtual Railway Modelの名が示す通り「鉄道模型シミュレーター」として誕生したのですから、その意味においてこのような楽しみ方が「ある意味」において正しい楽しみ方なのではないか、と思います。

「鉄道」というキーワードから連想される光景の中から印象的なものをピックアップし、これを再構成してコンセプチャルなアートに昇華するところに、鉄道模型の醍醐味があるような気がします。そこではリアリズムよりもインパクトに重きがおかれ、それでありながら、鉄道工学の様式美が自由度が際限なく広がるのを抑制して作品を引き締める、と言ったところでしょうか。

VRMを扱うWebからこのカテゴリに該当するものを探しますと、私が真っ先に思い浮かべたのはflanker氏による「flanker's loopline」でした。様式美を極めた氏のレイアウトは、全体の構成は元より、細部のちょっとした小物に至るまで、VRMユーザーに示唆を与える要素が詰め込まれています。コンセプチャルなレイアウト作成を目指しておられる方は、一見しておいて損はないでしょう。

 

三大潮流その2:写実派

前述の印象派と好対照となるのがここで言う「写実派」です。

本稿では「実在する鉄道路線を含む風景の再現を目指す」手法を「写実派」と呼ぶことにしました。ネット上では同様の意味を持つ造語として「実在レイアウト」という言葉も用いられているようですが、個人的に日本語の語法として違和感を感じるので、敢えて一般的な用語を用いることにしました。

印象派を、「鉄道模型の伝統」を受け継いだVRMの楽しみ方であるとすれば、写実派は「Virtualならでは」のVRMの楽しみ方と言えるかも知れません。

リアル鉄道模型の場合、予算や設置場所の問題から、実在の風景をそのまま縮小したレイアウトを作成することは、現実には極めて困難です。また、設置してしまえばおいそれと変更できないリアル鉄道模型にあっては、敢えて実在モデルの制約を自らに課してバラエティを楽しむことを放棄する方は少ないのではないかと思われます。

VRMの場合、記憶媒体の許す限りレイアウトを作ることができ、部品は事実上コピーし放題ですから、リアル鉄道模型において実在モデルを有するレイアウト作成を制約していた要素が一切ないことになります。逆にいうと、そのような制約に明に暗に不満を持っていたリアル鉄道模型ユーザーが、VRMユーザーとなって、これまでの不満を解消すべく写実派レイアウトにはまる、という構図もあるのかも知れません。

「実在レイアウト」が「実在(する風景をモデルにした)レイアウト」というニュアンスで用いられているのは理解できますが、「実在」という言葉の本来の意味(通常は「実(際に存)在(する)〜」という意味で用いる)や、省略語の作り方のセオリーから、国語教師の専修免状を持っていたりするghostとしては、どうにもしっくりこないわけでして・・・。

写実派レイアウトと言えば、まゆきち氏による「鉄道模型シミュレーター(VRM)で作った私のレイアウト集」を抜きには語れないのではないでしょうか。九州地方を中心にVRM3版だけで既に200を超える駅がレイアウト化されています。取材活動も含めたその徹底さには感服する限りです。

レイアウト作成のテクニックや、実在路線をモデルにしたレイアウト作成に際する情報収集についても言及されていますので、写実派レイアウトを作ろうとお考えの方には参考になると思います。

実は、まゆきち氏のWebで個人的に最も気に入っているのは「リニアモーターカー」というネタだったりするんですが・・・。

三大潮流その3:技巧派

前段において「Virtualならではの楽しみ方としての写実派」という見解を示しましたが、そこからさらに一歩踏み込んだのが、ここでいう技巧派です。

本稿では「VRMで実現可能なことをレイアウト化する」というレイアウト作成の考え方を技巧派と呼ぶことにしました。印象派、写実派が、ともに「どのようなレイアウトを作りたいか」からレイアウト作成が始まる点で共通しているのに対し、技巧派は「こんなレイアウトが作れそうだ」からレイアウト作成が始まります。そのような意味において、技巧派はリアル鉄道模型とは異なる、VRMの特性が前面に出ている例、と言うこともできるでしょう。

さらに細かく分けると、技巧派は「この車両(部品)を使いたいから」というように、リリースされたパーツを効果的に使うことを目的としてレイアウトを作成する「部品派」と、「このテクニックを例示したいから」と特殊な技法を効果的に使うことを目的にレイアウトを作成する「技術派」に分かれるように思われます。前者は「2号セットを買ったから道路が目立つレイアウトを作ろう」といったもの、後者は「電線を使って吊橋が作れるから、吊橋の目立つレイアウトを作ろう」といったものが該当すると言えるでしょう。

多くの場合、技巧派は前述の印象派・写実派のいずれかと密接な関係を伴うことがあるように思われます。ある程度作品としての完成度を持ったレイアウトは、技巧だけでは作ることができません。使いたいパーツや技術をベースに、印象派であればどのようなコンセプトを含むか、写実派であればどこの路線をモデルにするか、でレイアウト全体のデザインが決まるはずです。このような観点でみた場合、技巧派は印象派・写実派のサブセットに過ぎない、と言うこともできるでしょう。

その一方で、少なくないVRMを扱ったWebにおいて「技術情報」を扱ったページが独立して設けられていることから、VRMユーザーは本人が意識しているかどうかは別にして、大なり小なりの技巧派指向を持っているのも確かではないかと考えられます。ここから、本稿では前述の2派とは性格のことなる技巧派を加え、「三大潮流」と呼ぶことにしました。

 

ある意味において、CHO氏による労作「部品カタログ」「車両カタログ」は、技巧−部品派の最高峰ではないか、と思ってみたり。

 

三大潮流それぞれの特性

断るまでもないと思いますが、私=ghostの本稿における趣旨は「三大潮流のどれか1つが正しい」といったものではありません。ここまで述べてきた3つの潮流には、それぞれ一長一短があるように思われます。これを整理して把握しておけば、より完成度の高いVRMレイアウト作成に資するのではないか、という仮説の元、下らぬ雑文を書き連ねている次第です。

そういうわけで、以下に三大潮流各々のメリット・デメリットをマトリクスにしてまとめてみます。

こういうエクスキューズが必要なところが「どんな人の目に止まるかわからない」Webコミュニケーション特有の難しさだな、と思ってみる。

<ghost的・三大潮流対比表>

衒学技法その3:

マトリクスに相互に相殺する長短所をまとめると、なんとなくそれらしい。

上表は、レイアウト作成作業自体の特性、加えてそのレイアウトをWeb等で公開した際の特性、の2つに着目してまとめてみました。以下、いくつかピックアップして言及してみたいと思います。

第1に、印象派と写実派のレイアウト作成上の対比として、VRM固有の制約をどう扱うか、提供されているものを使うしかない車両・ストラクチャという制約とどう折り合いをつけるか、という点は注目すべきでしょう。

具体的には、写実派指向でいく場合、どうしても再現できない光景がストラクチャの制限から当然生じます。一方、印象派には原理上はそのような制約はありませんが、その自由度を作品としてまとめるにはそれなりのセンスを要求されます。この点、写実派においては写実に徹する限りにおいては肝となるリアリティを踏み外すことはありません。痛し痒しです。

第2に、同じく印象派と写実派を対比した場合に、何をもって作品の完成と見なすか、いわゆる「エクジットクライテリア」の問題も見逃せません。

写実派の場合、モデルとした実在の風景を納得がいく程度に再現できれば完成といえますが、印象派の場合、そもそも完成像は作者のイメージとしてしか存在せず、かつそれは流動的なものであるはずですから、ついつい同じ作品にちょこちょこ手を加え続けてしまう、というケースが想定できます。

そんなわけで「建物のバリエーションを増やす」をお勧めしてみたり。

第3に、Webでのレイアウトを公開に際しての各潮流の特性を対比した場合、印象派では、どんなに作者自身が素晴らしいレイアウトであると思っていても、それが個人的な心象風景かたスタートしている以上、そのイメージを共有できない人にとってはまったく興味の持てない作品になる可能性があります。

一方、写実派の場合は、実在の風景という「共有可能なイメージ」がモデルになっているので、他者の関心を引くのは比較的容易と言えるでしょう。しかし、関心を引けるということは、裏を返せば評価が辛口になるということであり、「この駅のここは本当はこうじゃない」とか「この編成のそこを走っているのはおかしい」等の突っ込みを受けること恐れがあります。

最後に、他の2つの潮流と異なる切り口である技巧派の功罪も考慮の価値があります。何事もそうですが、技術偏重主義は本来の目的=レイアウト作品の完成、を見失う最大要因です。一方で、「人とは違う自分だけのオリジナルレイアウトを示したい」という欲を滅殺するのは難しいでしょう。

Webでレイアウトを公開しているのは、VRMユーザー全体からすればほんの一部のはずですから、さほど問題ではないのかも知れませんが。

字数を重ねた割には何の結論もないのですが、月並みな表現ながら、それぞれの特性を踏まえた「バランス」が、よりよいレイアウト作成の調味料となるのではないか、と考える次第でして。

 

ほんとに呆れるほど月並み。

三大潮流自己評価の奨め

ここまで辛抱強く読み進めてくださっている貴方、忍耐力に自信をもって良し。

VRMレイアウト作成力アップを目指す貴方にお奨めしたいのは、ここまで述べてきた観点からの自己評価です。論より証拠、私=ghostのVRMoviesに対する自己評価チャートを以下に示します。

<青色が最適バランス、赤色がVRMovies自己評価>

衒学技法その4:

意味ありげに挿入するレーダーチャートも、なんとなくそれらしい。

模擬試験結果なんかについてくる評価文を添えるとすれば、以下のような感じでしょうか。

ghostくん。明らかに技巧偏重の傾向が見て取れますね。「策士、策に溺れる」という格言に耳を傾ける必要があるようです。デザイン的には写実派指向のようですが、今ひとつ徹底さに欠けています。面倒臭がらずに足を使って豆に取材を心がけましょう。

[合格判定C:志望校の見直しか、血尿を伴う努力を要します]

なんだか、この下らないネタやりたさにここまで長文を書き連ねてきたようで嫌ですね。それはさておき。

「たかが遊びでそこまでしなくても」との声が聞こえてきそうですが、ある程度VRMを遊び尽くしてちょっと手詰まりかな、と思われた時などに、このような自己分析をしてみると、それまで挑戦していなかった新しい方向性が見出せるのではないか、と思い書いてみました。

 

実際、そうなんですが。

VRMはどの潮流へと向かっていくのか

最後に、あくまでも私見ではありますが、VRMのシステム自体は今後どのような方向へ向かっていくのか、といったところを考えてみたいと思います。

おそらく、VRM1がリリースされた当初にあっては、開発元であるI.MAGiCさんの意識は「印象派のみ」だったのではないか、と想像しています。敢えて「鉄道シミュレーター」としてではなく、「鉄道模型シミュレーター」としてVRMが世に出た、ことがその理由です。もちろんここには、VRM1リリース当初のPC性能では「写実派」を指向することが難しかった、という遠因もあるはずです。

現行バージョンであるVRM3は、これまでのバージョンと比較して格段に車両・部品の細部再現性が高まりました。また、ビュワーの俯瞰視点が、編成にフォーカスしたものに変更されています。これらは、VRMが、その前身であるリアル鉄道模型の伝統である「印象派」指向から、徐々にVirtualならではの「写実派」指向にシフトしてきていることの表れではないか、と考える次第です。

一方で、I.MAGiC版とTOMIX版の部品ストラクチャには、本稿で述べてきたこととは少し異なる傾向も見てとれます。リアル鉄道模型がオリジナルであるTOMIX版は、本稿論旨から言えば「印象派」ということになりますが、実際には特に建物についてはTOMIX版のストラクチャは実在モデルのあるもの(コンビニや屋上看板付ビル等)が目立ちます。一方でI.MAGiC版のそれは、抽象的な、言い換えれば使い回しのきく無難なデザインのものが多いような気がします。

我田引水が許されるのであれば、TOMIX版ストラクチャの写実指向は、昨今の射出成型技術の向上に拠るものが大きいと仄聞しますので、その背景には、VRMのバージョンアップ毎の変遷同様に、技巧派指向の延長としての写実派指向があると言えるのかも知れません。

このような傾向は何もVRMに限ったことではないのかも知れませんが。

VRMoviesは基本スタンスは技巧派、レイアウトデザインはやや写実派指向ですので、上に述べた分析が正しいのであれば、I.MAGiC様には是非とも現行路線を堅持いただきたいと考えているのですが、それでも敢えて注文をつけるとすれば、「長方形以外のレイアウトベースのサポート」を、次期バージョン以降で取り入れていただきたいなぁ、と思っています。これが可能になれば、現実的に実装可能なメモリの範囲内である程度の路線ならばそのままVRM上で再現可能、という線もアリではないか、と考えてみたり。

長方形(幾何的には正方形を含む)以外のレイアウトベースをサポートするとなると、技術的には現在でもしばしば噂されるメモリリーク(当方としては未検証)の解決がより深刻になるのかな、と思ってみる。

まぁ、そんなに実在路線を走りたいなら「電車でGOでもやってなさい」ってことなんですが。

 

実際、ハマってるんですが。

以上、冗長な駄文にここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。何分私見ですし勢いにまかせて書いた論考ですので、認識間違いや論旨不明な部分もあろうかと思われます。

本稿に関するご意見やご批判はありがたく頂戴したいと思いますので、何かあれば当方までメールにてご連絡ください。

本論考はVRMoviesの私見に基づくものです。VRM開発元であるI.MAGiC社、また本稿内にてリンクしたWebとは一切関係ありません。本稿内の記述について問題があれば適時修正しますので、メールにてご指摘ください。

 


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