2005/06/11 上梓

駅論[カーブ/コーナー/フェイク]

本稿の趣旨

(1) 鉄道模型レイアウトにおいて、駅は印象的な情景を生み出すことの可能な要素の1つであるが、デスクトップサイズでは扱いが難しい。

(2) デスクトップサイズのレイアウトに効果的に駅を実装するに際しては、固定観念を捨てて一工夫加える必要がある。

(3) 鉄道模型シミュレーターを活用することにより、印象と効果が最大化する駅の構成を検討することが容易になる。

レイアウト設計論シリーズでは、論考のサマリーを冒頭に掲げます。サマリーを読んで完全に理解できた方は以降を読むには及びません。ハッキリ言って時間の無駄です。特に今回は無闇やたらに長いので、先に忠告しておきます。

前回取り上げた「踏切」同様に、否、それ以上に、「駅」は鉄道模型レイアウトを形作る要素の中でも最重要のモノの1つであると断言しても、異論のある方は少ないでしょう。一方で、駅はレイアウト上への配置が最も難しい構造でもあります。

本稿では、600x900mmサイズまたはそれに準じるサイズのレイアウトを「デスクトップレイアウト」と呼称し、主にそれについて論じます。

所以は如何。

当然のことながら、駅はレールと密着する構造物であり、またそうでないと意味がないものです。つまり、トラックプラン、ひいてはレイアウトプラン全体と密接に関係しています。さらに、駅はそれを構成する下位の要素(プラットホーム、駅舎、跨線橋、etc...)が多く集まって形成されるものであり、多くの下位要素はそれぞれが必要不可欠です。従って、必然的にレイアウト面積に対する占有率も断然大きくなります。

この結果、特に本稿がターゲットするようなデスクトップレイアウトのサイズにあっては、実装が非常に難しいか、実装したとしてもそれが反ってレイアウト全体のバランスを破綻させ、不満足な作品に陥ってしまうといった危険のあるものでもあります。

拙Webでもしばしば言及する、水野良太郎氏などは、著書の中で「駅中心の構成にこだわる愛好家が多い」ことを認めた上で、身の丈にあったレイアウト作りを目指すのであれば「敢えて駅中心のレイアウトにしない/駅を作らない(いずれも趣意抜粋)」ことを提言しておられます。事実、氏の作例の中でも小品の部類はゲージを問わず駅がないケースが多いように思います。

これまた繰り返し書いていることですが、氏の真意は「固定観念にとらわれるな」であって「小型レイアウトに駅を作るな」といったドグマ的なものではないと、私は思います。

本稿では、氏の上述のような提言も踏まえた上で、それでも敢えて駅が作りたい場合、つまり、デスクトップサイズのレイアウトを作る場所・時間・予算しかないけれども、それでもやはり駅が欲しい、という場合に、何か工夫はできないものか、考えてみようと思います。

もちろん、私が言いたいのは「自由に考えてみよう」ということであって「水野の言うことなんて間違ってる!!」ではありません、念のため。

普通に駅を置いてみると?

鉄道模型レイアウトにおける駅を論じるには、駅の部分だけを論じても意味はありません。前述したように、駅の構成はトラックプランと密接にかかわるからです。この観点から、本稿ではトラックプラン込みで駅配置を考えていくことにします。また、配置するストラクチャは駅本屋と跨線橋に留め、他要素による論点の発散を防ぎます。

トラックプラン総論については、後日、稿を改めて論じてみようと思います。

まず、デスクトップレイアウトにおける駅配置の中でも、最もスタンダードと思われる2つのプランを検証し、その問題点を洗い出してみましょう。その問題点を解決するか、或いは解決できないまでも改善できるアイデアがあれば、それが本稿の求める答えであるはずです。

単純化のために、TOMIX FineTrackレール利用を前提に論じますが、仮にフレキシブルレールを使うにしても、このサイズのレイアウトボードを使うのであれば結論は近似すると思って良さそうです。

<スタンダードプラン(1)>

R280mmのU字折り返し間に280mmのストレートレールを配する、FineTrackの最も基本的なトラックプラン。

上掲は、スタンダード中のスタンダード。シンプルなオーバルループの手前側直線部に駅を設けるプランです。論じるまでもないことですが、一見して明らかな問題点は駅有効長の短さです。

厳密には「駅有効長」と言うのは、若干のオーバーランがあっても運用に支障をきたさないホーム長でないといけないのでは・・・という気もするのですが。

ただ、実際の鉄道模型レイアウト作りでは、例えば手持ちの最長編成が8輌だったとして、リアリティを追求して10輌横付け可能なホームを作ったとしても、多くの愛好家はそこに10輌の編成を滑り込ませたいという欲求には勝てないだろう、っつー気もするワケで。

なので、本稿ではあくまでも「便宜的」にではありますが、駅有効長を「編成がピッタリ、もしくは、たとえ若干飛び出しても乗降口だけはなんとか収まるホームの長さ」という意味で使います。

<ビュワーでも見てみよう>

VRMビュワーで車輌を置いてみるとよくわかりますが、2輌がやっとです。さらに、駅直線部にR280mmの急カーブが隣接しているため、車輌がここへ食み出した状態で停車させると著しく見目麗しくない上、プラットホームと車輌のクリアランスもシビアです。現実的には単行か、車長の短い車輌を運用することになるのではないでしょうか。

続いて、もう1つのスタンダードなプランを見てみましょう。これも非常によく見られるパターンですが、オーバルループ内部へ向かって引込み線を設ける、というものです。

<スタンダードプラン(2)>

代表的なものとして、P280-30で本線から分岐後、更に構内でP541-15で複線化するトラックプランをチョイス。本線からの分岐位置や角度でバリエーションがあるが、駅有効長はいずれも似たり寄ったり。

施工初期、何もないレイアウトボード中央部に不安を感じ、なんとかしてそこへレールを引き込みたくなる、というのはレイアウト施工経験者ならば一度や二度は感じた経験がおありではないか、と思います。

<ビュワーでも見てみよう>

念のために付記しておきますが、本稿で言うところのスタンダードプランを採用したデスクトップレイアウトを否定したり、そういったプランを採用しておられる方を非難する意図は一切ありません。

本稿の真意は、鉄道模型シミュレーター=VRMによって、このような駅配置&トラックプランの試行錯誤が容易になり、かつ、即座にビジュアル的にフィードバックされる点を実感していただくことにあります。

オーバルループの内部は非常に大きく見えるものですが、意外にも引込み線を使っても大して駅有効長は稼ぐことはできません。むしろ、このプランへと施工者を誘うのは駅有効長ではなく、2編成の並列留置ではないか、と思われます。そこで、上掲スタンダードプラン(2)でも駅構内にもう1つ分岐を設けてみました。

デスクトップ・エンドレスレイアウトの施工事例としては、Nゲージ小型レイアウト城北平原鉄道が、非常に読みやすい施工記と豊富な進捗写真があってお奨めです。

このプランでも、駅有効長は改善されていません。また、駅配置の副作用として、レイアウト図面上でいうところの右下方向が、ある意味「死に地」になっており、植物を植える以外にはほとんど活用できない場所になっている点も問題と言えるでしょう。

 

以上、デスクトップレイアウトにおける、駅を含む2つのスタンダードなプランを見てみました。ここから、以下のようなことが言えそうです。

デスクトップレイアウトに「普通」に駅を作ると・・・

 1.駅有効長はせいぜい2輌分程度である。

 2.駅直線前後がいきなり急カーブになる。

 3.駅と直近の角地の間が死ぬ。

改善策を考えてみよう

無論、もっとも簡単な解決策は「レイアウトのサイズを大きくする」ことですが、それが可能ならばハナからこんな議論は不要です。

また、サイズが大きくなったらなったで、実は同じことに結局悩むんだ、と私は思うのですが、本稿では割愛します。

ここまでの考察で、デスクトップレイアウトに駅を設けるトラックプランの問題点が明らかになってきました。これらをすべて一気に解決出来る方法は、簡単にはみつかりそうにありませんが、確固撃破であればなんとかなりそうです。そこで、それぞれに対するカウンタープランを示してみることにします。

まずは、駅有効長をせめてもう1輌増やしてみましょう。

<改善プラン(1)>

折り返しのカーブ曲率をR243mmに落とすと同時に、トラックプラン全体をレイアウトボードに対して傾け、可能な限り直線区間を稼ぐ戦略。

この戦略をベースに、さらに一工夫を加えたレイアウトプラン例はこちらをご参照あれかし。

極めて安直な解決策ではありますが、カーブをより急にすることで直線部を伸ばしたのが上掲のプランです。当然、その分だけ駅有効長が伸び、3輌編成が余裕をもって入線できるようになります。そのトレードオフとしてあからさまにリアリティを欠く急カーブを受け入れざるを得ない、と言うこともできます。

<ビュワーでも見てみよう>

リアリティ以前に、車輌によってはカーブがきつ過ぎて入線できないかも。

一方で、直線部とレイアウトボードの縁に角度を設けた副次的な効果として、上掲レイアウト図で言うと右上、左下に、かなり大きな空き地が確保されている点は見逃せません。スタンダードプラン(2)で角地が「死ぬ」ことを問題にしましたが、このプランはカーブのリアリティを殺した代わりに、角地を生(活)かした、とも言うことができます。

別掲レイアウトプランでは、この余白を高架駅の足元、および、高架区間を囲む建物、といった演出に活用した次第。

さて。

改善プラン(1)においても、駅有効長は1輌分しか増やせませんでした。また、角地が生きたとは言え、興をそぐ急カーブと単純極まりないトラックプランは如何ともし難いところです。

なぜ、これが限界なのでしょうか。それは、デスクトップレイアウトではこれ以上の連続した直線区間を設けることが出来ないからに他なりません。とすると、次の一手は「駅を直線区間に設ける」という暗黙の前提を無視するところにありそうです。そこで、コレです。

<改善プラン(2)>

手前(左図では下)から奥に行くにつれ、カーブ曲率がR541mm、R280mm、R243と変化するトラックプラン。拙作第三期レイアウトで実際に試して思ったことだが、手前に緩和曲線を十分入れてやりさえすれば、意外と奥手の急カーブは気にならないもの。

ちなみに、VRM的にはカーブプラットホームを第7号所収「切り通し」で再現している。この技法については本館のこちらの記事をご参照あれ。

図面だけではわかりにくいかも知れませんが、要するに、直線部ではなく曲線部に駅を作るプランです。

<ビュワーでも見てみよう>

駅有効長は、若干構造的な無理があるとは言え、驚くなかれ5輌が入線可能に。これであれば十分、特急クラスの車輌を受け入れることが出来ます。

また、駅配置のための確保が不要になったストレートを短くする一方、カーブについては特に手前方向に緩和曲線としてのR541mmを取り入れ、実感的なカーブを狙っています。これもまた、高速で颯爽と走らせたい優等列車向けの要素であると言うことができるでしょう。

緩和曲線については、はいで氏のWeb「おきらく研究室:レイアウトと列車のページ」でいろいろ学ばせていただきました。はいで氏に多謝。

さて。

改善プラン(2)では、改善プラン(1)で果たせなかった長編成の入線を可能にすると同時に、緩和曲線の導入によってデスクトップレイアウトに付き物となる「カクンと曲がる急カーブ」の問題を解決しました。

一方で、再びレイアウトボード手前左側に「死に地」を作ってしまっているのは否めません。このプランでは強引に引込み線を作ることで少しでも死に地を活用するようにはしていますが、やはり角地が鬼門になっている点は回避できていないように思います。そこでもう一捻りしてみることにします。

<改善プラン(3)>

改善プラン(2)同様、手前に向かってカーブ曲率を大きくしたオーバルループ。島式のデルタプラットホームで角地の活用を狙った。

同様のコンセプトでデスクトップレイアウトへの2駅設置を試行したレイアウトプランを公開しているのでそちらもご参照あれかし。

 

なお、お遊び的に安全側線を設けているが、もちろんこれは必須ではない。高価なポイントを使うのが嫌であればオミットも可也。

ここまでのプランでは、駅が常にループの内側にありました。これをループの外側、つまり処理に困る角地に持ち出すことで前述の鬼門の解決を狙ったのがこのプランです。

<ビュワーでも見てみよう>

再び駅の有効長は3輌分になってしまいましたが、緩和曲線は確保しています。そして何より、ここまでに例示したプランと比べて、比較的(あくまでも比較的、ですが)リアリティのある見た目を保っているプランでもあります。

特に、プラットホームがエンドレス内部に設置されるプランに対し、このプランでは運転者の(つまりレイアウト手前からの)から「ホーム越しに停車中の列車を眺めることが出来る」という特典があります。上掲スクリーンショットでは敢えてプラットホーム上のストラクチャをオミットしていますが、ここにベンチ・駅名表示板・広告・日除け屋根等を配すことにより、その隙間から垣間見える列車の雄姿を楽しむことが可能になります。

 

ホーム構造物を通して停車中の列車を見る面白さについては、拙作第三期レイアウトでも類似コンセプトの駅を導入することにより再現しているのでご参照あれかし。たとえばこの写真とか。

以上、デスクトップレイアウトに駅を設けるにあたって問題となる「駅有効長」「急カーブ」「角の死に地」の改善を狙った3つの改善プランを例示してみました。もちろん、これらは例に過ぎませんし、最適解でもないと思いますが、少なくとも以下のことは言えそうです。

デスクトップレイアウトに駅を実装する際の工夫は・・・

 1.ストレート区間をボードに対して斜めに配する。

 2.カーブ区間中に駅を設ける。

 3.レイアウトボードの角地に駅を設ける。

もう1つの解決策〜フェイク〜

ここまで、デスクトップレイアウトに駅を実装するにあたっての問題点を洗い出し、その問題を回避するための改善プラン例を通して、デスクトップレイアウトに駅を実装する際の工夫を考えてきました。ここで改めて、冒頭で触れた水野良太郎氏の提言に立ち戻り、「敢えて駅を作らない」という解決策について考えてみるのも無駄ではないでしょう。

と言うのも、ここまで示した改善プランは、それぞれスタンダードプランと比較すれば優れた点を見出すことが出来るものの、やはり所詮はデスクトップレイアウトであり、たとえば、「総延長の短さゆえに同じ駅を繰り返し通過する実感のなさ」に対しては打つ手がありません。デスクトップエンドレスレイアウトである以上、同じレールを列車がぐるぐる回る点は避け難いのですが、駅はどうしても目立つ構造物であるため、その欠点がより際立つという点は否めないのです。

そこで、駅を作らずに、かつ、それでも駅が欲しい、という願いを叶える「フェイク」をご紹介しておくことにします。たとえば、このような感じです。

<フェイクプラン(1)>

基本構造は改善プラン(3)同様にレイアウト手前に向かって緩和曲線を設けたオーバルループ。奥手に向かって15mm勾配を登っている。

駅はありません、こんな具合に。

<ビュワーでみた奥手築堤部>

厳密に言うと、このプランでは跨線橋の奥手側が600x900mmの範囲から食み出していたりしますが・・・

ところが、これを運転者の視点から見るとこうなります。

<一歩引いて運転ポジションから眺める>

同コンセプトのフェイク駅を拙作第二期レイアウトで実装していますので、そちらもご参照あれかし。

ダミーの跨線橋と足元を隠す樹木の効果で、まるで列車の向こう側に駅があるように錯覚しませんか?

このプランの利点は、第一に見る者の気分によって駅があるように見えたりないように見えたりする、という点です。有り体に言えば、列車が高速で走行していれば駅はないように感じますし、上掲スクリーンショットの位置に列車を留置すると、(そう見たいと願えば)駅があるように感じることが出来ます。

さらに、フェイク的に駅を感じさせている部分が築堤化によって手前の空間から独立しているため、エンドレスループ内部は駅構造を設けた場合に比較して、自由に演出をおこなうことが可能になります。駅を作ってしまうと、そこから派生する街構造の必然性に存外引き摺り回されます。限られた面積の中で街並みの演出に注力したい方にお奨めのプランと言うことが出来るでしょう。

もう1つ、フェイクのサンプルをご覧に入れましょう。

<フェイクプラン(2)>

前掲改善プラン(1)とまったく同じトラックプランを高架化したもの。

 

<やはり駅はないけれど・・・>

ここに更に地上線との立体交錯を交えたプランを拙著「鉄道模型シミュレーター レイアウト設計と製作」に収録していますので、そちらもご参照あれかし。

<運転ポジションから見ると・・・?>

もはや説明不要かとも思いますが、奥手に列車を留置した際、視線を遮るビルがフェイク的に「駅ビル」の役目を果たし、そこに高架駅があるかのように錯覚させるプランです。

まとめ〜VRMによるシミュレーションの威力〜

駅は、鉄道模型レイアウトの構成要素の中でも、最重要のモノの1つであることは疑いありません。かつ、駅はトラックプランを左右するその構造と、大面積を占有し周辺のストラクチャ配置にも制約を与えるという意味において、取り扱いの最も難しい要素でもあります。

トラックプランの検討、クリアランスの確認であれば、紙に図面を描くことでも対処は出来るでしょう。否、実際、これまで多くの鉄道模型愛好家たちがそうして優れた作品を残してこられたことは紛れもない事実です。それを承知の上で、私は敢えて鉄道模型愛好家の皆様に鉄道模型シミュレーターの活用を強くお奨めします。

図面上の検討だけでも鉄道模型レイアウトの施工は可能です。しかし、よほど優れた立体認識能力に恵まれていない限り、図面のみから正確な完成像を思い描くのは至難の業です。無論、施工してしまえばそのような問題はなくなりますが、もし出来上がった、或いは出来上がりつつあるそれが、あなたが再現したいと願った「理想の鉄道風景」と乖離していたとしたら・・・。特に本稿で論じた「駅」はトラックプラン全体と密接に関係するため、修正には多大な労苦を伴うのは必定です。

このへんについては拙著「鉄道模型シミュレーター レイアウト設計と製作」の第1章・第5章で体系的に論じてみましたので、そちらもご参照あれかし。

鉄道模型シミュレーター=VRMを活用することにより、そういった不安を払拭することが可能になります。VRMビュワーは図面として入力されたレイアウトプランを瞬時に3Dグラフィックスで表示します。デジタルツールであるがゆえに、試行錯誤も容易です。本稿に限っても、たとえば「フェイク」による擬似的な駅表現がレイアウト全体の中でどれほどの効果を持つかについては、VRMなくして施工前に知ることは事実上不可能でしょう。

このように、VRMはデスクトップレイアウトの限られた面積の中に、自身の理想の鉄道風景の再現を目指すにあたって、強力な支援ツール足り得るのです。

例によって例の如く、マジ半分ネタ半分です。あまり真に受けないようご注意ください。

 


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