2005/05/26 上梓

踏切論[道路交差/視線誘導/角地活用]

本稿の趣旨

(1) 鉄道模型レイアウトにおいて、踏切は印象的な情景を生み出すことの可能な要素の1つである。

(2) 踏切には「道路交差」「視線誘導」「角地活用」の3つの効果がある。

(3) 鉄道模型シミュレーターを活用することにより、印象と効果が最大化する踏切の配置を検討することが容易になる。

レイアウト設計論シリーズでは、論考のサマリーを冒頭に掲げます。サマリーを読んで完全に理解できた方は以降を読むには及びません。ハッキリ言って時間の無駄です。

現実の鉄道シーンにおいては列車高速化・交通渋滞緩和・安全性向上の観点から、踏切は徐々にではありますが高架化によって駆逐されつつあるようです。だからといって、鉄道模型レイアウトまでもがその風潮に追従する必要はありません。むしろ、踏切こそが、駅と並んで誰しもが鉄道の雄姿を間近に感じることのできる施設であり、また、多くの鉄道ファンにとって、その鉄道体験の原点の1つではないか、と思います。

そのような意味において、踏切は鉄道模型レイアウトの要素の中でも見せ場の1つである、と言うことが出来ます。これは、踏切関連のストラクチャが、複数のメーカーから細かなアクセサリから模型列車の通過に併せて動作する自動遮断機に至るまで商品化されていることからも裏付けられます。

自動踏切については、TOMIX製にせよKATO製にせよ、デスクトップサイズのレイアウトに使うにはやや大きすぎるのが残念です。工学的に止むを得ないのだとは思いますが。

一方で、ストラクチャとしての踏切は、模型列車の走行安定性を保証すべきレールと密接するがゆえに、設計に注意を要するものでもあります。折角の見せ場が、模型列車の走行を阻害してしまっては本末転倒ですし、敢えてその労苦を背負って踏切を設けるのであれば、可能な限り印象的な情景を生み出したいものです。

踏切の3つの効果

視点を転じて、そもそも踏切が鉄道模型レイアウトの要素として、どのような意味合いを持つのかを考えてみましょう。つらつら考えるに、踏切の効果は「道路交差」「視線誘導」「角地利用」の3つに集約されるように思われます。

 

「道路交差」は、文字通り、線路と道路の平面上での交差を実現することを意味します。道路は、鉄道模型レイアウトにおいて本質的な存在ではありませんが、情景にリアリティや生活感を組み込む上では欠かせない要素です。エンドレス構成のレイアウトの場合、レイアウト表面はエンドレスの内側と外側に分断されます。エンドレスループの内部だけで完結する道路、というのはどう考えてもナンセンスですし、情景としての実感を欠くことになりますから、必然的に踏切を設けることになります。

敢えてエンドレスループ内部のみで完結する道路を作る演出もありえます。こちらのレイアウトプランをご参照あれかし。

無論、線路と道路を交差するには他にも立体交差という手段が考えられます。が、これは想像以上に大きな面積を必要とします。模型列車が走行可能でなければならない線路は当然として、道路にもまた情景として許容可能な勾配の限界があります。Nゲージスケールでは立体交差実現には少なくとも50mm程度の高低差を要します。存外、これだけの落差を勾配によって、特に個人で気軽に所有できるサイズのレイアウトに設けるのは大変です。一方、踏切は、まさしく平面交差ですから、そのような問題が起こりえません。つまり、小型レイアウトに自然な道路を作ろうとする際に踏切は不可欠だと言うことです。

 

立体交差については、後日改めて論じたいと思います。

「視線誘導」は、踏切と道路によって作られる、トラックプランとは独立したレイアウト上のラインを意味します。鉄道模型レイアウトを眺める人の視線は、通常は走行する模型列車を追いかけます。つまり、トラックプランが視線を誘導します。しかし、トラックプランには前述したように「模型列車が走行可能でなければならない」という至上命題があり、好き勝手に敷くことは出来ません。

ここで論じている視線については、別項「視線論」の「遠近対比」もご参照あれかし。

一方で、道路は、もちろん限度はあるにせよ、トラックプランに比べると自由に設けることが可能です。そして道路は、完成した鉄道模型レイアウト上で線路同様に平面を分断するラインとして機能します。特に、踏切によって道路は線路を、そしてレイアウト全体を横断するラインを生み出します。レイアウトを眺める人の視線が、このラインに沿って誘導されることは想像に難くありません。

逆に言うと、レイアウト製作者は自身が「ここが見せ場だ」と思う地点へ向かって道路と踏切でラインを生み出すことにより、見る者の視線をそこへ向かって誘導することが可能になります。前段で述べたように、踏切は小型レイアウトにとって不可欠な要素となります。同じ踏切を作るのであれば、その効果を最大化すべく、踏切によって生じる視線とレイアウトの見せ場とを連携させることが、最終的な出来映えを左右する大きなポイントになると言うことができるでしょう。

 

「角地利用」は、特に小型のエンドレスレイアウトでしばしば問題になる、折り返しカーブ区間の外側、レイアウトボードの四隅の空き地の演出を意味します。これまで、レイアウトプラン集でもしばしば触れてきましたが、トラックプランがレイアウトボードの外縁部ぎりぎりまで広がるデスクトップレイアウトにおいては、その四隅の演出もまた、レイアウトの出来映えを左右する大きなポイントになります。

角地利用については、こちらのレイアウトプランをご参照あれかし。このプランでは、敢えて踏切2つでレイアウト横断道路を設ける一方、角地の2つを駅に使っている。

踏切はこの難題を解決する絶好のアイテムであると言えるでしょう。それは、ここまで述べたように、踏切に四隅に余った区画とエンドレスループの内側とを結合する効果があるからに他なりません。無論、四隅すべてに踏切を設けるのはやり過ぎかとは思いますが、レイアウトボードの対角線を貫通する道路を設け、踏切を両角に設けるというプランは、デスクトップレイアウトにおいては定石のひとつと言えるのではないでしょうか。

VRMで設計・検討し、施工する

以上の論点をご理解いただいた上で、拙作レイアウト第一期第二期の踏切実装例をご覧下さい。

  

いずれの場合も、(1)道路のエンドレス外から内部への導通を図り、(2)見る者の視線をストラクチャ密度最大のポイントへ誘導し、(3)レイアウトボード手前右隅の処理を兼ねている、ことがご理解いただけるかと思います。

そして、毎度お馴染みではありますが、こういった情景を施工する前に、設計・検討の段階でビジュアルに把握できることこそが、VRMを鉄道模型レイアウト製作に活用することの最大の利点なのです。

いい加減くどいですか、そうですか。

  

例によって例の如く、マジ半分ネタ半分です。あまり真に受けないようご注意ください。

 


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