2005/04/27 上梓

視線論[遠方俯瞰/近接凝視/遠近対比]

本稿の趣旨

(1) 鉄道模型レイアウトを眺める視線としては、遠方俯瞰/近接凝視/遠近対比が考えられる。長く楽しめるレイアウトとは、これらのいずれの視点からも楽しめるレイアウトである。

(2) 専ら平面図上における検討によって設計された鉄道模型レイアウトは、必ずしも遠方俯瞰/近接凝視/遠近対比のいずれの視線からも楽しめるレイアウトにはならない。

(3) 鉄道模型シミュレーターを活用することにより、多様な視点から楽しめるレイアウトを設計することが容易になる。

レイアウト設計論シリーズでは、論考のサマリーを冒頭に掲げます。サマリーを読んで完全に理解できた方は以降を読むには及びません。ハッキリ言って時間の無駄です。

エンドレス様式にせよモジュール/セクション様式にせよ、鉄道模型レイアウトの面白さは「(鉄道のある)世界を所有する面白さ」に尽きると思われます。

本物の鉄道を眺める「視線」というものは、存外不自由なものです。なかなかどうして「おぉ、ここからの眺めは素晴らしい」と思えるポイントに巡りあうのは容易ではありません。また「こんなところから眺めてみたい」と思う風景も、運用・安全上の問題から立ち入り禁止であったり、そもそも物理的にその眺めるポイントに至れない(上空俯瞰・険しい崖etc.)ことの方が多いのではないでしょうか。

一方で、鉄道模型レイアウトは、ミニチュアながらも現実には有り得ない「視線」を鉄道風景に投げかけることを可能にします。逆に言うと、「現実には有り得ないものも含め、様々な眺めを存分に楽しめないレイアウト」というものは、鉄道模型レイアウトとしてはその価値が半減している、といった見方をすることも出来るでしょう。

3つの視線

大雑把に言って、鉄道模型レイアウトを楽しむ視線は3つに分けて考えられると思われます。本稿ではこれを「遠方俯瞰」「近接凝視」「遠近対比」と呼ぶことにします。

「遠方俯瞰」は、3つの視線の中でももっとも普遍的なものと言えるでしょう。何も考えずに普通に完成したレイアウトを眺めればこの視線を投じることになるからです。

<遠方俯瞰の例>

以下、拙作第一期レイアウトより。

 

奥手に乱雑な本棚が写っているのはご愛嬌、と言うことで。

一方で、遠目にレイアウトの存在を認めると、自然と取りたくなるのが「近接凝視」の視線です。小振りなNゲージ車輌とは言え、ギリギリ間近まで顔を近づけて凝視してみると、なかなか迫力を感じるものです。

<近接凝視の例>

もちろん、近接凝視の時点で既に遠方に何が背景として存在するかは問われるのだが、ここでは捨て置く。

もう1つ、鉄道模型レイアウトならではの視線は「遠近対比」ではないか、と思われます。現実の鉄道に比して急なカーブ半径の影響もあり、鉄道模型レイアウトはスケール縮尺以上に風景が凝縮されます。リアリティからいうと欠点ともとれるこの特徴も、遠近のオブジェクトを同時に見る際の組み合わせによってはメリットに化けます。

<遠近対比の例>

自分では一番お気に入りの視線。

既にお気づきと思いますが、上掲の3枚の写真はすべて同じレイアウトで、ほぼ同じような位置に同じ車輌を留置して撮影したものです。

以下、手前味噌な発言ですが、このレイアウトは小さいながらも「珈琲を片手に遠目に眺めたり」「ぐっと顔を寄せて車輌近辺のディテールを楽しんだり」「姿勢を低くして鉄橋下から覗き込んだり」と、気分で様々な楽しみ方をすることが出来ます。

そして、これが一番重要なことなのですが、これらの楽しみはレイアウトが完成した時点で偶然成し遂げられたのではなく、まだレイアウト製作に着手する以前の設計の段階から計算された結果であったということです。

視線を意識して設計する

一般的に、鉄道模型レイアウトの設計というものは、トラックプラン(線路の敷き方)ありきで平面上に線引きされたものであることが多いのではないでしょうか。

<平面上の図面>

極端な話、この図面だけでレイアウトの全貌を把握できる才能豊かな人は廉価版である「鉄道模型レイアウター」でも十分なワケで。

ところでVRM4版の「レイアウター」って出るんですかね。あんまりメリットなさげ・・・。

上掲の図面は、ベース・シナリーの構築、レール・ストラクチャの配置については有益な情報を得ることができますが、残念ながら本稿で述べているような「視線」に関する情報をほとんど引き出すことが出来ません。強いて言えば、視線を直線で引いてみることで、何が何の陰に隠れるか、くらいならば把握できるでしょうが、これも水平方向に関してのみ。垂直方向については作ってみないことには結果はわかりません。

ここに、鉄道模型シミュレーター=VRMを鉄道模型レイアウト設計に活用する大きなメリットを見出すことが出来ます。論より証拠、以下のVRMビュワーのスクリーンショットとリアルNレイアウトの写真をご覧ください。

<遠方俯瞰視線>

<近接凝視視線>

<遠近対比視線>

このように、VRMを活用することで、極めて正確に施工後の視線から得られる映像を、施工着手の前に知ることができます。

そして、もっとも特筆すべき点は、VRMは単に施工後のレイアウトの完成像を描き出せるのみならず、もしそれが気に入らなければ、施工着手してしまう前に修正するチャンスを与えてくれる、という点なのです。

例によって例の如く、マジ半分ネタ半分です。あまり真に受けないようご注意ください。

 


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