2004/02/09

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ここいらで一旦VRM3を評価してみる

言うまでもなく、当Webの目的は「伊達と酔狂だけでVRMレイアウトをNゲージレイアウト化する」ところにあるワケです。が、実のところは伊達と酔狂以外にも、VRM、特に現行バージョンであるVRM3をNゲージレイアウト設計ツールとして評価しそのレポートを公開することで、来るべき次期バージョン「VRM4」の開発に少しでも寄与できないかな、という真面目な思いもないワケではないのです。と言いますか、本当に伊達と酔狂だけでやってるんだったら、単なるアホです、私。

 

 

これでI.MAGiCのVRM4開発担当さんの目にまったくとまってなかったら、本当にアホですな。

閑話休題。レイアウト製作もだいたい軌道に乗ってきましたので、ここいらで一旦、これまでの経験を通して「Nゲージレイアウト設計ツールとしてVRM3」を評価してみよう、というのが本日のお題です。

 

役に立った点

第一に、当然と言えば当然ですが、TOMIXの道床付レールを使う限りにおいては、レールプランが確実であるという点が、地味なようで大きなメリットであったと言えます。

<VRM3によるレールプラン>

今回のような単純オーバルループであればVRMなど無くともレールを調達することは可能だったと思いますが、Nゲージレイアウト製作初体験の ghost としては「このレールを買えばいいのだ」ということが明示的に示されている安心感だけでも大きなメリットでした。複雑なレールプランを取るのであれば何をか言わんや。

第二に、着工前から完成像のイメージを視覚的に掴むことができる点が、やはりこれも「シミュレーター」と銘打っている以上、当然と言えば当然のことながら大きなメリットでした。

言うまでもなく、第一のメリットだけでよければ、VRMの廉価版である「鉄道模型レイアウター」でも用は足りますが、ghost が思うに第二のメリットの方が大きいのではないかと。

<設計初版からVRM3で得た3D-CG画像>

結局、左画像の設計は製作の過程で修正されました。が、これはVRM3の設計ツールとしての限界ではなく、むしろ「製作から設計にデザインがフィードバックされる」という鉄道模型レイアウト製作における一般的なプロセスを踏襲したものとご理解いただきたく。

慣れたNゲージャーの方にはたわけた物言いに聞こえるやも知れませんが、Nゲージレイアウト初体験の ghost は、実際に部材を購入するまで、レイアウト全体の大きさをイメージすることが出来ませんでした。数値として寸法はわかるのですが、例えば「この空き地は面積が〜cm2だからどのくらいストラクチャが置けるな」といったようなことが、具体的に思い浮かばないワケです。

その点、VRM3を使えば、まったく部材を購入する前からリアルな3D-CGを交えてイメージを膨らませることができます。もちろんこれが全てではなくて、事実 ghost も「一旦これで足りる」と判断してからストラクチャを追加購入したのは既にご報告の通りです。が、少なくとも「買い過ぎて困る」という事態には、今のところ陥らずに済んでいます。これはVRM3を設計ツールとして活用しているからこそ、と言っても良いでしょう。

物足りない点

続いて「もう少し何とかならないかな〜」と思った点を挙げてみたいと思います。

第一に地形高度設定・ストラクチャ設定と部品配置のレイアウター画面上での位置のズレについてです。詳しいことは flanker氏によるわかりやすい論考がありますのでそちらをご参照ください。PC上で楽しむことのみを目的としたVRMレイアウトを作るに際しては、このズレはこれまであまり気になりませんでした。が、Nゲージレイアウトを実際に作るとなると、10mmのズレは ghost の感覚では許容範囲を超えているように感じました。

flanker氏がこの仕様を「レイアウター上で、 ストラクチャーの配置・テクスチャーの区別・地面高度表示(緑のグラデーション) をひとつの画面で表示するに際して、ある部分妥協的・暫定的措置」と評しておられることに異論はありませんが、1/150 の世界の模型作りという観点から実サイズ換算1.5mの誤差はやはり痛いかな、と。

第二に、これも仕様上止むを得ないことだとはわかっているのですが、NゲージレイアウトとVRM3では地面の表面処理の考え方が根本的に異なります。Nゲージレイアウトでは塗料による塗装、パウダー等による積層、というプロセスを経るのに対し、VRM3ではビットマップテクスチャの貼り付けのみでこれをシミュレートします。この違いは非常に大きく、結局のところ地面処理はレイアウト実物を見ながら考えるより他ありません。

もちろん、ビットマップを工夫することによってVRMレイアウトにおいてNゲージレイアウトに近い表現をすることは可能です。が、それはあくまでも画面上での表示をNゲージレイアウトに近づけるためのプロセスであって、Nゲージレイアウト製作に資するプロセスではありません。

まがりなりにもITエンジニアで飯を食っている ghost としては、無茶な注文であることは承知の上なのですが、敢えてNゲージャーの立場を代弁して、上述したような「塗装、そしてパウダー・コースターフ・バラスト撒き」といったプロセスをシミュレートすることをご検討いただきたい、ととりあえずは書き留めておきます。

処理速度に問題があることを承知の上で愚案を1つ。

左記問題の本質は、VRM3が「事前に用意されたテクスチャを選択的に配置する」という戦略を取っていることにあると言えます。これは「好き勝手な地面塗装を可能にしようとすると、レイアウト面積全体の表面状態をメモリ上に保持せねばならない」という物理制約に対するカウンターです。

では、「好き勝手な地面塗装」を許しつつ「メモリ消費を抑える」手はないものか、と考えますと、(1)利用可能な色数をパレット式に絞り込む、(2)動的にテクスチャを生成・配置し、テクスチャのバッファを使い切った場合は近似したテクスチャ2つから中間物を生成して再配置する、という戦略があり得ます。無茶に聞こえるかも知れませんが、昔の8ビットパソコンには実際にこういう設計思想でビデオメモリの実装を抑えたものがありました。まぁ、DirectXの仕様との兼ね合いもあるので困難とは思うんですが。

役に立たなかった点

最後に、VRM3がNゲージレイアウト製作において、まったく役に立たなかった点についても書いておきます。と言っても、これは前述の「物足りない点」と言っていることはほとんど同じです。

今回、ghost はNゲージレイアウト初挑戦にもかかわらず、レイアウトベースへのレール直付けを避け、敢えて発泡スチロール積層による高度確保をおこないました。これは、もちろん第一には「川越えのガーター鉄橋を作りたかった」のが最大の理由ですが、もう1つには「Nゲージャーの多くが直感に頼っているであろう立体的な地形作成をVRM3がサポートし得るかを評価する」という目的も兼ねておりました。

いかにも「後付けの理由」のように聞こえるのは気のせいです。気のせいなんだってば。

<結局、「直感」に頼って切り出した発泡スチロール製ベース>

結論から言うと、役に立たなかった、ということになります。前述の地面の表面処理と同様に、Nゲージレイアウトにおける立体地形の生成が「積層と削りだし」あるいは「骨組みと貼り付け」というプロセスを経るのに対し、VRM3のそれは「20mm毎に高度を設定する」という、地面表面処理以上に根本的に異なるアプローチを取ります。

VRM地形ツールの「平地作成」を「ある厚みの発泡スチロール土台の設置」、「サンドペーパー」を「削りだし」と読み替えることは出来ます。しかし、やはりこれも画面上での表示をNゲージレイアウトに近づけるためのプロセスに過ぎません。言い換えると、VRM上に作った地形を実際のNゲージレイアウトに反映するためのフィードバックパスがない、と言うことになります。

逆に言うと、このような地形シナリーをPC画面上でデザインし、かつ、そのデザインを実際の立体造形に何らかの形でフィードバック可能な機能を盛り込むことが出来れば、VRMはNゲージャーにより歓迎されるのではないか、と考えたりするワケで・・・。

これまた困難とは思いつつ、愚案を1つ示そうかと。

自由度をトレードオフして、実際のNゲージレイアウトで多用される方法論のみに特化すれば、実現可能ではないかと思ってみたり。

「積層と削り出し」は、たとえば「30 x 30 x 30 mm 発泡スチロール」という部品があって、これの辺上の3〜4点を指定すると点を結ぶ平面に切断されるというインターフェイス。「骨組みと貼り付け」は、擬似3D座標軸へのワイヤーフレーム方式インターフェイス。いずれも実装可能で、かつ、適当に図面展開してやれば実際の立体造形にフィードバックできないかな、と思うんですが。

今回のまとめ

本日はVRM3を上げたり下げたりしてみました。

以上を踏まえて、ここまでの ghost の感想をまとめてみますと、VRM3は私がそうであるように「VRMから入ったユーザーをリアルNゲージレイアウトへ誘う」という観点からは非常に強力なツールであると思われます。ある意味で、顧客を奪われるかも知れない潜在的リスクを犯しつつもVRMの発展に協力してきたTOMIX社の先見の明に驚かされます。

一方で、「生粋のNゲージャーにVRMをツールとしてお奨めできるか」というと、今回いろいろ指摘したように、まだまだ課題があるように思われます。が、コレは「だからVRMは駄目なのだ」という意味ではなく、むしろ逆に「これらの課題を克服することでVRMはさらに発展できる」と考えたいところです。

余談ながら。

既にお気づきの方もおられるやも知れませんが、I.MAGiCのVRM会議室でも少し話題になっていた、2004年1月に工学社から出版された「VRM3・レイアウトコレクション」所収の記事「Vゲージを目指そう」を書いたのは、何を隠そう私です。

 

なんか、やってること支離滅裂ですね。会議室では敢えてこのコトを書きませんでした。なかもずさん、ごめんなさい(私信)。

ghost は初めてのNゲージレイアウト製作に着手するにあたり、先行サイトや関連書籍をいろいろ拝見したのですが、確かにそれらは役に立ったのですが、一方で、ちょっと痒いところに手が届かない、という感覚を感じていました。思うにこれは立体造形全般に言えることではないかと思うのですが、立体造形のノウハウは、そもそも文字化して伝えるのが困難なんですね。完成したものの像を示して見る側に考えさせるしかない。そして見た側が、実際に自分で手を動かして、初めて自分なりのノウハウを得るワケです。ここらへんが立体造形の世界に入る際の敷居の高さかな、と思ったりするのですが、VRMが鉄道模型レイアウトに関して、この敷居を下げる効力を持ち得るのではないか、つまり、VRMレイアウトファイルを交換することで、これまで文面では伝わりにくかったレイアウト製作の立体造形のノウハウを他者へ伝達する新たなコミュニケーションパスを確立できるんじゃないか、という思いもあって、今回、ちょっと真面目に書いてみました。

 

何分、伊達と酔狂でやっていることなので、事実誤認や知識不足による誤りも多いかと思います。本記事について、ご批判等御座いましたら、お気軽に当方へメール頂けると嬉しいです。また、感想などもお寄せいただけるとなお一層。

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