2004/03/29

前回の報告はこちら

第一期施工の際にも、着工前に VRM3 で設計したレイアウトをそこまでの製作進捗に合わせて着工半ばに更新したことがありました。第二期施工部においても同じことをしましょう、というのが本日のお題です。少し寄り道しますので、とっとと本題に進みたいかたはこちらからどうぞ。

 

VRMでレイアウト設計をするメリットとは?

本題に入る前に少し前置きしておく必要があるでしょう。と言うのも、「途中で設計を見直さないといけないのなら、Nゲージレイアウト製作にVRMを使うメリットがないんじゃないの」という疑問を持たれる方もおいでだろうと思われる方です。本企画においては、全体の通奏低音に「VRMで設計をすることによってNゲージレイアウト製作が楽になる」を据えていることはご承知と思いますが、現に第一期・第二期ともに着工中に設計を見直す必要にかられています。これは自家撞着ではないのか、と突っ込まれるのは尤も至極と言えるでしょう。

結論から申し上げますと「途中で設計を見直さないといけないのなら、Nゲージレイアウト製作にVRMを使うメリットがないんじゃないの」という指摘は間違っています。あるいは、間違ってはいないものの「水面に映る月を見て空の月を見ない愚を犯している」と言わねばなりません。所以は如何?。

鉄道模型レイアウトを製作する難しさは「昨夜見た夢を正確に絵にする難しさ」に喩えることができます。確かに記憶の中にイメージはあるのだけれども決して具体的な像を結んでいない何か、を現実に存在するものとして描き出すことが難しいのは容易に想像いただけると思います。では、何故難しいのでしょうか。これには、本質的には同じ問題を2つの側面から考えることで答えることができます。

1つにはコストの問題です。「昨夜見た夢を正確に絵にする」にはカンバスや絵の具といった部材が必要です。カンバスや絵の具は使えば消費されます。写生のように「見たまま」を絵にする場合と異なり、目に見えるお手本のない「夢」を絵にするには、カンバスや絵の具を消費しながら試行錯誤することが必要になります。これを鉄道模型に当てはめれば、そこに要するコストがやたらと大きくなることは言うまでもありません。

もう1つはフィードバックの問題です。一部の天才的な人々を除き、元来人間の脳味噌というものは具体的に目に見えていないものを論じるのに適していません。具体物が目の前に現れて初めてそれについて考えることができる、ということは日常生活の中でも多々起こり得ることです。例えば、何気なく小説を読んでいて、ふと自分が日々悩んでいた問題に気づいたという経験がある方は多いのではないでしょうか。これは、抽象的に頭の中でモヤモヤしていた問題が、小説という具体的な物語との対比によって初めて明確に意識され思考の対象となる好例と言えるでしょう。

鉄道模型レイアウトを製作しよう、という方の頭の中には漏れなく銘々の「手元に模型として実現したい理想の鉄道風景」がイメージされていることと思います。これを鉄道模型レイアウトとして具体的に結実するに当たり、いきなり部材を買ってきて並べるのは論外として、紙に抽象化した図面を描いて作業を進めると、間違いなくイメージと現実のギャップにぶつかります。そしてこのギャップにぶつかって初めて気づいたことをレイアウトに反映しようとすると、余計に部材を買い足したり、あるいはここまで折角作ったレイアウトの一部を壊すことになります。

お気づきかと思いますが、左記は鉄道模型レイアウトに限った話ではなく、あらゆる造形活動に共通するお話です

たとえば。

かつてプラスチックモデルと言えば、職人肌の造形師さんが木製の原型を試行錯誤で製作し、これを元に金型を起こしたものでした。最近は、この職人技に頼っていたパートが 3D CAD による設計にシフトする傾向があります(もちろん、職人技も健在です)。このコトの良し悪しはさておき、職人技=限られた才能ある人にしか出来ない困難な作業、に精通せずとも製作プロセスに参加できる、という有り様は、ghost が鉄道模型レイアウトに興味を持ちつつもなかなか着手できない方に VRM をお奨めする理由と通じるものがあります。

なお、蛇足ながら補足しておくと、ここでいう「製作プロセスに参加できる」というのは、あくまでも「スタートラインに立つことが容易になる」という意味です。誰しもが「職人技」を発揮できるという意味ではありません。道具の進歩は「機会の均等」を助けるものであり、「才能の不均等」を相殺するものではないし、そうであってはならない、という点は強く主張しておきたいと思います。

VRMを使えば、もちろん初期投資(PC及びVRMのパッケージ)こそ必要ですが、一旦VRMを利用できる環境さえ整えば、Virtual であるがゆえにコストを度外視して試行錯誤を繰り返すことができます。そして、リアルな 3D CG によるフィードバックを通して、設計を「手元に模型として実現したい理想の鉄道風景」に徐々に近づけていくことができます。そして、この結果得られるレイアウター画面上の図面は、まさしく「昨夜見た夢の設計図」になるはずです。このように「途中で設計を見直す」という行為は、VRMをNゲージレイアウト設計に利用するメリットを相殺するものではなく、むしろコレこそがVRMをNゲージレイアウト設計に利用するメリットそのものなのです。

 

ゴチャゴチャと小難しいコトを書きましたが、要するに第一期に続いて第二期でも設計更新を余儀なくされたことへの「言い訳」です。

第二期施工部設計更新

第二期施工部は、現物合わせ覚悟で敷設したフレキシブルレール区間を含むため、設計更新(修正)もまた止むを得ないだろうと覚悟はしていました。特に、@想定よりも大きな曲率(200mmを想定していたが、実際には最大210mmまで広がった)のカーブが確保できた、A地上線レイアウト奥手のポイント位置がクリアランス確保のために 60mm 以上右へ移動した、を受けて微妙にレール配置が変化したため、その周辺ストラクチャの配置についても再検討する必要が発生しました。

 

<第二期施工部設計第二版>

 

第二期施工部設計第一版はこちら

最も大きく変化したのは、地上線レイアウト奥手の引込み線に隣接する「路面電車停留場」の位置です。引込み線がポイントに位置に合わせて全体的に右方向へ動いたことを受けて、向かってレールの右側にあった停留場を左側に移設しました。この結果、停留所は地上線と道路に挟まれる形となりました。成り行き万歳ながら、元よりも自然な構成になったように思います。

 

そもそも第一版は併用軌道のド真中に車止めがある等、妙な部分が多かったです、ハイ。

<ビュワーで見ると・・・>

 

余談ですが。

VRM3・3号所収の「工場」って、ひょっとして今回このレイアウトでも採用したGM製「プラント工場」がモデルですか?。あまりにピッタリなんですが・・・。

これに伴い、併用軌道区間を含む道路の位置を微妙に修正しました。全体的に左に寄ったような感じになります。この結果、レイアウト中央の「街並みコレクション」が密集するエリアに余裕が生じたので、ここに路地裏的な小道を設けることにしました。さらに、レイアウト正面からこの小道を通して見える位置に併用軌道用の路面電車停留場を設けることにしました。この僅かな「覗き窓」は、今回のレイアウトの見せ場の1つになりそうです。

 

道路の基礎工事

この設計更新によって道路の位置が確定したので、現在は道路の基礎工事に注力しています。KATO製シナリーペーパーの貼り付けのみで道路を表現した第一期施工部と異なり、第二期施工部地上線は「併用軌道」を実現するためにもう一工夫必要になります。併用軌道感を出すには、レール面と道路面の高さを、ピタリとは言わないまでも、ある程度揃えることが要求されるからです。

地上線を構成しているKATOユニトラック及び固定式レール+コルク道床について、レイアウトベース面からレール面までの高さを測ってみると約 6mm でした。道路面にもこの高さを与えるために、ghost お気に入りの部材の1つであるバルサ材を使うことにします。バルサウッドというヤツは軽くて丈夫な上、カッターでも簡単に切断できる、使いまわしの極めて良い部材です。

 

ちなみに ghost 愛用のバルサ材は「カワイバルサウッド」 80 x 450 x 3mm。近所のホームセンターにて購入。1枚、200円くらい。

<道路の積層構造図>

 

上掲図が現在進行中の道路基礎工事の構造図です。基本は 3mm 厚のバルサ材の2枚積層による 6mm厚路面の実現です。これに加え「街並みコレクション」の歩道部分が約 1mm厚であることに合わせて、ストラクチャが隣接しない部分の歩道を 1mm厚のバルサ材で表現することにします。積層バルサの側面は水性ホビーカラーのミディアムグレーで塗装し、コンクリート造成の感じを表現しています。

道路面は、これまた ghost お気に入りの部材である KATO製シナリーペーパーを使用します。Nゲージレイアウトで道路面を表現する部材としては、一般的なアスファルト路面を中央線も含めて表現した部材も市販されていますが、リアリティよりも全体の親和感を重んじる ghost としては、ややオーバーな質感と周辺とのコントラストを強める意図から第二期施工部もシナリーペーパーの採用を決めました。

 

第一期で余ったからじゃないです、念のため。実際、足りないんで買い足しますし。あの砂目の質感がなんとも言えないんです。

<線路隣接部分の断面構造図>

 

併用軌道部および踏切は上掲図のような構造で実装します。レール幅に対し、枕木・道床を含む線路構造物は 1〜2mmの幅広となります。当然、隣接する道路面との間には隙間が生じることになります。これを解消するために、道路基礎に対しシナリーペーパーをやや幅広に切り出し、基礎からはみ出す部分については 1mm厚のバルサ材で裏打ちします。これにより、併用軌道および踏切部の道路とレールの密接感を演出しようという作戦です。

加えて、レール間も 1mm厚バルサから切り出した石畳/踏み板で塞ぐ予定。

で、レイアウトの現状ですが、例によって現物合わせで型紙を得つつ、道路基礎部分を切り出して配置してみたのが下の写真です。

 

<最新の状態>

 

併行してGM製プラント工場を塗装しました。紅白縞の煙突が全体の中央にシンボリックに立つ姿に萌え。

パッと見た感じ順調に見えるかと思いますが、実はバルサ材調達時の見積もりが甘く、あと一歩のところでバルサ材が足りなくなってしまいました、ありゃりゃ。

 

で、再度近所のホームセンターに行ったら見事に売切れ(涙)。

道路ブロックパーツ化の意図

最終的な完成像のみを論じるのであれば、もっと効率のよい工法が他にもありそうな気がしますが、今回敢えてこのような実装方法を選択したのは、道路を「パーツ化」することを意識したためです。道路のパーツ化には、以下の2つの意味合いがあります。

1つには、今後の作業工程の中で道路面が汚れることを避ける、があります。第一期施工部ではこの点に思いが至らなかったため、シナリーペーパー貼り付け後に周囲にコースターフを撒く愚を犯し、シナリーペーパー表面に付着したコースターフの屑を掃除するのに随分と手間取りました。道路部分をブロックパーツ化しておけば、配置場所を確定させてから一旦取り除き、道路面を汚す可能性のあるプラスター塗布・塗装・バラスト撒布・緑化といった作業終了後に改めて道路部分を固着する、という手順を取ることができます。

もう1つには、レイアウト構築のプロセスをVRMのそれに近似させる、があります。以前「VRMへの改善提言」と題した拙論において「VRMのレイアウト構築プロセスを鉄道模型のそれに近づけるべき」という旨の主張を随所でおこないましたが、その裏返しと言うことになるでしょうか。

VRMのレイアウト構築プロセスを変更できるのは、結局のところ開発販売元であるアイマジック社のみです。もちろんこれを待って、VRMがより理想的なツールになってくれると嬉しいのですが、他者の仕事を口を開けて待つのはどうも性に合わないので、「向こうが近づいて来ないなら、こっちから近づこう」というアプローチがあってもいいのではないか、と思うに至りました。鉄道模型の構築プロセスは施工者の自由ですから。

古人曰く、押しても駄目なら引いてみな。

言うまでもなく道路のブロックパーツ化は、レイアウター画面上でマウスによるドラッグで自在に位置を変えるVRM道路部品を実際の鉄道模型レイアウトにおいて摸したモノです。「鉄道を模した鉄道模型を模したVRMを鉄道模型を作るにあたって摸する、とはこれ如何に?」的な奇妙奇天烈な関係がここにあるワケですが、冗談はさておき。

どんな分野においても、その筋の玄人になればなるほど「〜の正道はコレである」とか「〜は定石に従うべき」的な論調が出てきがちなのですが、ghost はそういうのがあまり好きではありません。VRMは紛れもなくNゲージ鉄道模型の派生物ですが、「Nゲージ鉄道模型こそが正である」という発想に拘泥していては堅苦しい限りです。VRMの便利な発想は、Nゲージ鉄道模型にも積極的に取り入れていくのも一興です。

 

加えて「本物鉄道に忠実に考証すべし」って主張も、私は苦手です。模型なんだから、それっぽけりゃいーじゃん、ってコトで。

もちろん、徹底的に考証にこだわる方々に敬意は抱きますが「そうでないと駄目」とかいうドグマ的な人はイヤだな。

 

一方で「VRMはNゲージ鉄道模型に近づけ」と言ったかと思えば、舌の根も乾かぬうちに「Nゲージ鉄道模型はVRMに近づけ」と、支離滅裂なコトを主張しているように見えるやも知れませんが、さにあらず。目指すべきはVRMの王道でもNゲージ鉄道模型の王道でもなく、所詮は子供の頃から「夢見た鉄道風景」が手元に実現できればそれで万事OKじゃありませんか。

ghostは、ここに紹介した内容について、読者のお手元での再現性をいかなる場合においても保証いたしかねます。ご承知おきください。

 


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